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アイデンティティと自信につながる、ベネッセサイエンス教室で学んだこと。理系大学院に進んだOB講師へのインタビュー【前編】

ベネッセサイエンス教室の上大岡教室の講師

神奈川県横浜市にある、ベネッセサイエンス教室(以下、サイエンス教室)の上大岡教室。今回お話を伺ったお二人は、小学生のころ生徒としてこの教室に通い、のちに講師になりました。生徒として、また講師として、長い間、関わってきたサイエンス教室の魅力について聞きました。

小学生のときの実習は今も心に残っている

ベネッセサイエンス教室、上大岡教室の外観
ベネッセサイエンス教室、上大岡教室

ーー 今日はお時間を頂き、ありがとうございます。お二人とも、小学生のときは生徒としてこの教室(ベネッセサイエンス教室 上大岡教室)に通い、大学生になってからは講師として働いていたそうですね。お二人とも、理系の学部から修士課程へ進み、この春(2025年3月)で講師は卒業だと伺っています。まず、自己紹介をお願いしてもいいですか?

澤口:はい、澤口ひよりと申します。中学までは地元の学校で、高校は横浜サイエンスフロンティア高校に通っていました。その後、北里大学の海洋生命科学部に進学して修士まで6年間を過ごしました。専攻としてはアカハライモリという毒を持つ生き物を扱っていまして、どのように毒を蓄積しているのかなど、生態と毒の関係について研究していました。この春でサイエンス教室の講師は卒業しまして、食品メーカーに就職します。

吉村:吉村和真です。僕も中学までは地元で高校は湘南工科大学付属高校に通い、東京海洋大学に進みました。今は修士の2年で、海洋生命資源科学専攻です。ざっくり言うと水産や養殖に関わる研究をしていて、中でも、魚の病気のワクチンの開発とか、ウイルスとかの研究をしています。今年の春からは博士課程に進みます。僕もサイエンス教室の講師はこの春で卒業です。

ーー ずいぶん長くサイエンス教室と関わってきたわけですが、この教室に通うようになったきっかけや、通い始めた当時のことは覚えていらっしゃいますか?

澤口:そうですね・・・。私は横須賀生まれ横須賀育ちなので、海も山も近いところで。小さいときはよく磯遊びに連れて行ってもらったり、山に行って虫取りをしたり、自然に触れる機会が多い子どもだったんですよ。なので、理科というか生き物全般がもともと好きで。両親もよくそれを知っていて、小学3年の学校で理科が始まるタイミングでサイエンス教室を見つけて連れてきてくれたんだと思います。3年生の秋ごろに入会して、6年生で卒業するまで続けました。

吉村:僕も全く一緒だと思うんですけど(笑)。幼稚園のときは本当にずっと虫を追いかけていて、アニメやマンガは全然見ないで、ずっと図鑑を見ているような子どもでした。両親は二人とも文系なんですが、もしかしたら選択肢のひとつとして理系のものに触れさせたかったのかもしれません。
僕が入会したころは、まだ幼児のコースはなかったと思います。年長さんで体験に来て、1年生の4月からスタートして6年生の最後まで続けました。

ーー 小学生のときにやった実習で、今でも記憶に残っているものはありますか?

澤口:入会してすぐのころだったか、水溶液を分類するという授業があって。リトマス紙とか万能試験紙とかを使って、酸性、中性、アルカリ性のどれになるか分類する実験があったんですね。そのとき、万能試験紙をもらって帰ったんですよ。それで、「この漢字もりもりでカッコいい名前のものでいろいろ測れるんだ!」と思ったのがすごく記憶に残っています。
あとはやっぱり生き物が好きだったので、解剖系はどれも印象に残っていますね。私が小学生のころは、4年生でイカ、5年生でフナ、6年生で豚の目の解剖をしました。
すごく印象に残っているものをあげると、フナの解剖だけ他とは違って、まだ生きていて麻酔したものを扱うんですね。で、おなかを開いて内臓を一通り取り出して。麻酔しているので、心臓がまだしばらくは動いているんですよ。切り取った心臓を生理食塩水の中に入れると、筋細胞はまだ生きているから動いているんです。
心臓はまだ動いている。心臓を失ったフナがそこにいる。先生から「これは生きていると言えると思う?」と聞かれたのを今も覚えています。すごく印象に残っています。

ーー とても深い質問ですよね。

澤口:あと、イカの解剖も楽しかったですね。イカの血って、酸素と反応すると青くなるんですよ。先生が過酸化水素水を用意してくれて、そこにイカの肺をいれたらパッと青くなって。みんなで「おお~っ」てなったのを覚えています。

吉村:僕の場合は花火ですね。今も4年生でやっています。
金属による炎色反応を調べて色の違う花火を作るという実習で、僕は銅を選んで緑の花火を作りたかったんですが、しけったりしてなかなか上手くいかなくて。まわりはみんなできているから悔しいし。みんなから遅れてしまって、先生と2人で、何回も何回もやり直しさせてもらって、やっと火が付いたときにはすごく感動しました。

花火
4年生で取り組む「花火」の実習

ーー ほかに印象に残っている実習というと、どんなものがありますか?

吉村:電気パワーで走る車、これですね。僕は当時、工作が大好きで。今の生徒さんも工作が好きな子はすごく多いです。電池ボックスやモーターって、おうちの方がよほど電気工作が好きでないと普通の家庭にはないですよね。今は2年生でやりますが、本当にサイエンス教室ならではだと思います。
僕はこれ、6年生くらいまでずっと家で遊んでました。ちょっとずつ違うパーツに変えたりして。探せば今でも、のりでベタベタになったモーターが家から出てくると思いますよ。そのくらい電気工作をやってたのを覚えてます。

電気のパワーで走る車のおもちゃ
2年生で取り組む「電気パワー」

ーー 実習によっては教材を持って帰れるものもありますね。持ち帰れる「自宅用教材」は、おうちに帰ってからも使っていましたか?

澤口:薬品系は確かに使った記憶がありますね。先ほど話した万能試験紙などは、家にある漂白剤なんかを借りて使って「おっ、変な色になった!」みたいにやっていた記憶があります。

吉村:僕は塩化コバルト紙がまだ家にあります。なんかもったいないと思っちゃって(笑)。親としては夏休みの自由研究などで利用したかったみたいで、持って帰った教材を「一緒にやってみようよ」ってやってくれるんですけど、僕はせっかくもらったから大事に取っておきたいと思っていて、試験紙などは今でも手を付けずにジッパー付きの袋に入れて取ってあります。

澤口:そういえば、水中微生物を扱う回でアルテミアというすごく小さいエビのような生き物の卵を持って帰るんですよ。運がいいと1ヵ月ちょっとで1センチくらいの大きさに育つんですね。うれしいなあと思って眺めていたら、姉に容器ごとひっくり返されたのを覚えています(笑)。

進路の決め手は「サイエンスをやってきた」という自信

ビーカーや試験管などの実験器具
画像提供:PIXTA

ーー 小学校卒業とともにサイエンス教室も卒業して、中学、高校と進んでいきますよね。進路を決めるにあたって、サイエンス教室で学んだことは何か影響があったでしょうか?

澤口:あったと思います!まず、私は姉が3人いて、一番上の姉は14歳離れているんですね。人生のずっと先を行っている人という感じなのですが、その姉が理系の修士まで行ったので、私も憧れというか、理系に進みたいというのがベースにありました。
それで、サイエンス教室に通って理科がより好きになって、小学校、中学校を過ごして。高校を選ぶとき、ちょっと遠いのですが、理科に関することがいろいろできる面白い高校があるということで、横浜サイエンスフロンティア高校を選びました。この高校に入るところまで踏み切れたのは、サイエンス教室に数年間通ったことで、理科系全般に対して抵抗感がなかったというのがひとつあると思います。

ーー:中学の理科の授業では、サイエンス教室で学んだことは役に立ちましたか?

澤口:そうですね。今って、小学校や中学校で理科の実験ってたいしてできないと思いますが、「自分はサイエンス教室で実際にこれをやったんだぞ、見たんだぞ」という、アイデンティティというか、実際にやったことに対しての理解度というのは、ほかの子よりあったと思います。
物理系などは特にそんな感じで。滑車の動き、滑車のはたらきについては実際に持ってひっぱってみないとわからないと思うんですよ。あの感覚や考え方は、サイエンス教室で学んだから中学・高校でもそれが生かせたと思っています。

滑車や重り
5年生で取り組む「誰でも力持ち」

ーー 吉村さんはいかがですか?

吉村:僕は、中学のときは陸上をやっていて、それが楽しかったのでスポーツに全振りしてました。高校は陸上が強いところがいいなと思って選びましたね。
サイエンス教室のことを強く意識したのは、高校で文理選択をしたときです。もともと理科と社会がすごく得意で、国語と数学が苦手で。理系でも文系でも苦手な教科があるんでどうしようかと思って、確か社会の先生に相談したんです。「成績でいうと社会のほうがいいから、文系がいいんですかね?」って。でも、小学生のときから理科の実験をずっとやっていて、さっき澤口さんがアイデンティティって言ってましたけど、アイデンティティというか、オリジナリティはあると自分では思っていたんですよ。「僕より理科の成績がいい人はいるけど、実際いろいろ触ったことがあるのは僕のほうじゃないか」っていう。そうしたら先生から「小さいときからそれだけ実験をやっていたなら、理系にいったほうがいいよ」って言われて。高校2年生くらいのときの話ですけど、そのときはサイエンスに通っていてよかったなあと思いましたね。

ーー ありがとうございます。では、次に大学に進むときはどうでしたか?理系は決まっているとして、今の専攻を決めたのはどんなことからでしょうか?

澤口:もともと生き物が好きで理系に飛び込んだので。中でも水の中の生き物に執着があるんです。やっぱり、小さいころによく海に連れて行ってもらって、陸とは違う変なポイントがある生き物に触れてきたことがひとつありますね。サイエンス教室との結びつきでいえば、そのもとからあった生き物や理科に対しての関心を継続させる、増幅させるようなものだったのは間違いないと思います。

吉村:僕も澤口さんと一緒で、生き物が好きで今の専攻に行ってます。魚と虫と鳥が好きで、本当にずっとそれを今でも追いかけているんですけど、虫学部と鳥学部ってないんですよね(笑)。でも、水産学部という学部があったので、東京海洋大を選びました。
そういえば、サイエンス教室でやったことで、化学とか薬品とか生き物系も全部好きだったんですが、実はさっき話に出た滑車のところだけなんかピンと来なくて。
それで、高校で理系選択をするタイミングで理科の科目も選ぶのですが、まず生物は絶対取るとして、2科目めは化学でも物理でもよかったんですが、滑車はどうも性に合わなかったというのを思い出して化学を選びました。勉強して苦手なものを克服するという選択肢もありましたが、自分の直感を信じて判断したほうが後悔しないと思います。サイエンス教室での思い出が進路の判断材料になったと思います。

ーー それも小学生のときに、実際にやったからこそわかることですよね。

吉村:今、講師として授業をしていると滑車はすごく面白いと思うんですけど(笑)。

澤口:私も高校では物理を選ばなかった人間ですけど、滑車の授業はすごく印象に残っていますね。動滑車を使うと物をひっぱるのに必要な力は確かに減るんですが、ひっぱる距離は長くなりますよね。そのとき先生が「現実は甘くないね」って言ったのがすごく面白くて。キャッキャッと笑って帰ったのを覚えています。
サイエンス教室に通っていて理科に対する抵抗感がなかったし、その先の人生も、それに沿ったものを選ぶことに全然迷いはなかったです。あと、アイデンティティの話ですよね。自分はこういう経験を積んだから、この先もこれで行けるんじゃないかという自信につながったところは確かにあったと思います。

実際に手を動かした経験は絶対にあとから生きてくる

科学実験を楽しむ子どもたち
実験を楽しもう!

吉村:僕はおうちの方とお話しするときにいつも伝えているんですが、サイエンス教室に通うことで、親が人生の選択肢をひとつ与えてくれたって本当に思っていて。実は僕も、理科の成績がずっとよかったわけではないんですよ。でも文理選択のとき、小さいころからやってずっとやってきたから理系を選んだというのもそうですし、博士課程に進む今になって振り返ってみると、こういう選択をするだけの経験は積んできたし、思い出を重ねてきたなと思います。
将来の選択肢のためには、小さいときからやっていたほうがいい。それに、卒業する6年生によく言っているのが「今までこの教室でやったことは将来生きてくるよ」ということ。例えば、実験のやり方などは、図や写真だけで見るより実際にやったほうが絶対にいいですよね。今も6年生の実験で出てくる水上置換法 というのがあって、「それはどういう方法ですか。図に書きなさい」という問題がテストに出たりするんですが、やったことがない人や写真でしか見たことがない人が答えるのは大変だと思います。
僕らは、実際に水の中に手を突っ込んで「ビーカーを沈めて、空気を全部抜いて」っていうのをやっていて、その経験がフラッシュバックしてくるんですよ。それがすごくいいと思う。子どもたちには「この場で実際に手を動かした経験が絶対にあとで生きるからね」って言っています。おうちの方には「選択肢がひとつ、ふたつと広がっていきますよ」と話しています。

*水上置換法・・・水に溶けにくい気体を集めるための基本的な実験技法

インタビュー【後編】を読む

※吉村さんの「吉」は、正しくは土に口です。表示の都合上「吉」と表記しています。

※カリキュラムや授業の内容は、澤口さん、吉村さんの受講当時、または取材当時のものです。内容等は変更になる場合があります。

PROFILE

澤口ひより(さわぐち ひより)

ベネッセサイエンス教室 上大岡教室の卒業生。大学、大学院修士課程に在籍中は、講師として同教室に勤務。2025年4月に民間企業へ就職。

PROFILE

吉村和真(よしむら かずま)

ベネッセサイエンス教室 上大岡教室の卒業生。大学、大学院修士課程に在籍中は、講師として同教室に勤務。2025年4月に博士課程に進学。

上大岡教室

〒232-0064
神奈川県横浜市南区別所1-3-8
エスケイビル1階
京浜急行本線 上大岡駅 徒歩11分
横浜市営地下鉄ブルーライン 上大岡駅 1番出口徒歩11分

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